移行よければすべて良し!Zoho⇔Salesforceのシステム乗り換えで注意すべきこと

はじめに

本コラムでは、クラウド型CRMであるZohoもしくはSalesforceをすでに利用していて、
他システムへ乗り換えを検討している方、オンプレミス型のCRMから上記製品に移行を考えている方を対象に、
移行の第一歩を進めるための情報を記載します。

「そもそもCRMって何?」「何でCRMを入れた方が良いの?」という疑問をお持ちの方は、下記の記事をご覧ください。

中小企業向けCRMとは?導入メリットと活用法を解説

CRMとは? 導入メリットは? などの基本的な部分から、中小企業向けのCRMの活用方法、システムの選び方についてご紹介します!

さて、かつてCRMシステムは、高額な初期投資や専門的なIT人材が必要となるオンプレミス型が主流でした。

10年ほど前からはSalesforceに代表されるクラウド型のCRMが急速に普及し、
多くの会社がオンプレミス型のCRMからクラウド型のCRMへシステムを移行していきました。

さらに近年では、既存のオンプレミス型CRMからの移行だけではなく、
クラウド型CRMからクラウド型CRMへの移行事例も増えています。

このような移行を伴うシステム開発プロジェクトでは、はじめに移行元のシステムを調査・整理し、
要件定義を経て移行先のシステムを開発、その後に移行作業のフェーズに入ります。

一連の作業は、短期間で完了するケースでも3か月、長いと1年以上かけて進行しますが、
移行フェーズまでのすべてが上手くいっていたとしても、移行が失敗したらすべてが台無しとなります。

本コラムでは、プロジェクトの成功/失敗を決める分水嶺とも言える「移行」について、
クラウド型CRMで有名なZohoとSalesforceを例に挙げて解説します。


Zoho⇔Salesforceの移行の基本情報

中小企業がCRMの導入や見直しを検討する際、Zoho CRMSales Cloudは有力な選択肢となります。

どちらも高機能で拡張性に優れており、多くの企業で採用されていますが、
導入する企業ごとのビジネスの規模や特性によって最適なプラットフォームは異なります。

両システムの違いについて比較確認したい方は、下記の記事をご覧ください。

【2025年版】
ZohoとSalesforceのCRM機能徹底比較!

比較検討されやすいZohoとSalesforce。
両社をCRM機能に絞って比較します!

よく似ていると言われるシステム同士でも、それぞれに異なる優位性があります。
そのため、現在利用しているCRMから別のCRMへ移行したいというニーズは決して少なくありません。

一例として、Zoho CRMとSales Cloud間はデータ移行が可能です。
CSVファイルなどの共通フォーマットを利用することで、データの受け渡しを行うことができます。

ただし、移行の際にはいくつかの注意点や考慮すべき事項が存在します。


SalesforceからZohoへの移行時の注意点

本章では、SalesforceからZohoへの切り替えを例に、注意すべき点を説明します。

ZohoからSalesforceのパターンについては述べませんが、下記に記載する注意点は、
本質的にはZohoからSalesforceの移行パターンでも同様です。

データマッピング

データマッピングとは、移行元項目のデータが移行先のどの項目に対応するのかを定義する作業を指します。

Zoho CRMとSales Cloudは、前述した記事で述べているとおり、それぞれ独自のデータ構造を持っています。

たとえば、テーブル(顧客、取引先、商談など)の名称(Salesforceではオブジェクト/Zohoではタブ)、
項目の種類、関連付けの方法などが異なる場合があります。

これらの違いにより、単純にデータをエクスポート・インポートするだけでは、
意図した形でデータが移行できない可能性があります。

移行時のトラブルを回避するためには、移行前には両プラットフォームのデータ構造を十分に理解し、
データマッピング作業を行うことが重要です。

また、移行先のプラットフォームに存在しないカスタム項目や設定がある場合は、
移行前にどのように対応するのか(新規作成するのか、移行しないのかなど)を検討する必要もあります。

たとえば、Sales Cloudはより複雑なリレーショナルデータベース構造を採用しているため、
取引先と取引先責任者を親子関係で管理できるなど、データの関連性がより深く定義されています。

一方、Zoho CRMは比較的フラットなデータ構造で、Sales Cloudの親子関係に近い設定は存在しません。
そのため、Zoho CRMで親子関係を表現する場合は親となるタブをあらかじめ登録しておく必要があります。

このようなデータ構造の違いは、データのマッピングや変換作業を複雑にする可能性があります。

データクレンジングと重複排除

データ移行を成功させるためには、データの品質を向上させることも非常に重要です。

特に長年利用されてきたCRMには、入力ミス、不整合なデータ、重複データなど、
データ管理上のゴミとなるデータが多く蓄積されていることがあります。

これらのデータを保持したまま移行してしまうと、移行先の新しいCRMの活用を妨げるだけでなく、
業務効率の低下や誤った意思決定につながる恐れがあります。

そのため、データ移行前には下記のような「データクレンジング」と「重複排除」の作業が必要です。

データクレンジング作業内容の詳細

  • 誤字脱字修正
  • 入力形式の統一
  • 欠損値の補完

重複削除の詳細

  • 同姓同名の顧客が複数登録されていないか確認して統合
  • 役職違いの同姓同名が複数登録されていないか確認して統合
  • 住所が同じ企業名が複数存在しないか確認して統合

これらの作業を丁寧に行うことで、移行後のCRMをより効果的に活用することができます。

また、Sales CloudからZoho CRMに移行する場合は、事前にデータの重複検知設定をZoho側に仕込み、
データ登録時に重複と思われるデータをエラーで弾く、という手法もあります。

ただし、このような設定を入れることはデータ移行速度を低下させる可能性もあることに留意してください。

参考情報

Zoho公式ナレッジベース:重複データの統合

ストレージ

ストレージにも注意すべき点があります。

それは、移行対象となるデータの洗い出しと正確な容量の見積もりを行うことです。

具体的には、以下のようなデータ容量を確認します。

レコードの容量(件数)

  • 取引先
  • リード
  • 商談

ファイル容量(Byte)

  • 添付ファイル
  • 画像

Salesforceと同じデータをそのまま移行する場合でも、
Zohoのデータ構造やファイル管理システムの違いによって必要な容量が変動する可能性があります。

容量の変動有無を確認するには、Zohoの無料プランやトライアル環境などを利用します。
実際に少量のデータを移行し、容量に変化が生じるかを確認してみることが有効な手段の一つです。

追加ストレージの購入手続きや反映に時間がかかる場合もあるため、
プロジェクト前もしくはプロジェクト開始早期に容量の見積もりを行うよう心がけましょう。

ファイルデータについては、移行先のプラットフォームにあわせて、
フォルダ構成や命名規則などを事前に設計しておくことが望ましいです。

Zoho CRMとSales Cloudのストレージの違いについては下記のリンクも参考にしてください。

【2025年版】
ZohoとSalesforceのストレージ徹底比較!

比較検討されやすいZohoとSalesforce。
両社をストレージ(データの記憶領域)に絞って機能比較します!

スムーズな移行を実現するデータ移行戦略

Sales CloudからZoho CRMへ、あるいはその逆のデータ移行プロジェクトをスムーズに進めるためには、
プロジェクトの明確な目標設定綿密な計画策定が不可欠です。

「何のために移行するのか」
「移行によってどのような効果を得たいのか」
といった目的を具体的に定義することで、プロジェクトの方向性が定まります。

たとえば、新しいCRM側でBPR(業務プロセス改革)に取り組んでいて、
移行後は商談の業務フローを根本から大きく変更するような場合においては、
元のCRMから商談に関わる全データを移行しない、という選択肢も生まれます。

反対に、全データを移行する場合は、
新しいデータ構造に合わせた形のダミーデータを作成する、という手法もあります。

すべては、プロジェクトの目標設定に依存します。

また、移行に際して生じる諸々の要素を考慮しつつ、現実的なスケジュールと移行の計画を決めることも大切です。

移行スケジュール策定時に考慮すべき要素の一例

  • 新システムと旧システムの並行稼働期間
  • 旧システムの最終稼働日
  • 新システムに移行するデータの基準日
  • 移行作業当日にかかる時間の算出
  • 移行作業のリハーサル日
  • 本番移行後の切り戻し計画

上記の策定や算出がしっかりと準備されていないと、予期せぬトラブルが発生することもあるため注意しましょう。


データ移行手法の違い

データ移行は、移行元のCRMからデータをエクスポートし、移行先のCRMへインポートする、という流れになります。

Zoho CRMとSales Cloudは、CSVなどの一般的なファイル形式でのエクスポート・インポート機能を備えています。

ただし、エクスポート・インポート機能があったとしても、異なるシステム間でデータを移行する場合は、
前述したとおりデータマッピングなどの事前作業が必要です。

他システムからSalesCloudに移行する場合

Zoho CRM、あるいは何か他のCMSからSales Cloudにデータ移行する場合は、
Salesforceが提供している「データローダー」を使ってインポートする必要がある分、事前準備に時間を要します。

データローダーとは

参考情報

Salesforce Developers:データローダーについて

データローダーの優れていることは、バッチ処理としても呼び出すことが可能なところです。

たとえば、マッピング済みのデータをローカル環境に保持しておき、
日中から夜間にかけてデータの移行を自動で進める、ということができます。

その際、エラーが起きたデータを自動的に判別するためのログ掃き出し機能も作りこめば実現できます。

データローダーの利用準備には時間がかかるものの、夜間に移行作業を進められることで、
移行スケジュールを大幅に短縮することができるようになります。

Salesforceはこのデータローダーの存在により、
長年利用されて大量のデータを保管しているオンプレミス型のCRMからの移行に優れています。

筆者も、Salesforceへのデータ移行時にはデータローダーを常に使用しておりました。
そして、このデータローダーのようなツールはZohoには存在しません。

他システムからZoho CRMに移行する場合

Sales Cloudあるいは何か他のCMSからZoho CRMに移行する場合、
Zohoには複数のクラウド型CRMからの移行ツールが標準機能として組み込まれています。

移行ツールを利用することで、事前準備の手間を大幅に省略することが可能です。

Zoho CRMの移行ツール

参考情報

Zohoナレッジベース:データ移行

Zohoナレッジベース:SalesforceからZoho CRMへのデータ移行

移行ツールが用意されている製品(一部)

  • Salesforce
  • Microsoft Dynamics CRM
  • Sugar
  • Act
  • Hubspot
  • etc..

Zoho CRMにはデータローダーのような汎用的なツールはありませんが、
様々なシステムからの移行ツールを標準搭載しているために、
クラウド型CRMからの乗り換えハードルは比較的低い製品であると言えます。

自社システムの乗り換え先を選定する際には、移行ハードルの高さも大事な要素として検討してください。


おわりに

中小企業がDXを加速させるためには、ZohoやSalesforceといったクラウド型CRMを慎重に選ぶとともに、
入れて満足するのではなく、最大限に活用することこそが重要です。

現在利用しているCRM製品が自社の業務フローや将来的な成長戦略に適していないと判断した場合、
システムの乗り換えを前向きに検討しましょう。

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既にSalesforceからZohoへの移行をご検討中の企業様も、是非お気軽にご相談くださいませ。

船井総研はZohoの認定パートナーです!

船井総研では、コンサルティング会社として中小・中堅企業様をご支援する中で、
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