
CRMを導入したが、現場では使われていない――。
そんな悩みを抱える中堅・中小企業の経営者や営業責任者は少なくありません。
「Excelに戻ってしまった」「情報が入力されず空のまま」「管理職の確認ツールになってしまった」など、
CRMの形骸化は決して珍しいことではないのです。
その多くの原因は、CRMツールそのものの機能不足ではなく、KPI設計や会議体など、
“CRMを活用する運用設計が不十分”であることにあります。
CRMは単なるデータベースではなく、「活用される仕組み」として設計されて初めて成果を生むものです。
ここで重要になるのが「CRMコンサルティング」の存在です。
CRMコンサルティングとは、CRMをただ導入するだけでなく、
企業の経営課題・営業プロセス・人材体制を深く理解したうえで、
最適なKPI設計やダッシュボード構築、会議体運用の定着までを支援するサービスを指します。
つまり、「使える仕組みとしてCRMを設計・浸透させる」ことが、CRMコンサルティングの本質です。
本記事では、船井総研が支援してきたCRMコンサルティングの知見をもとに、
Zoho CRMやZoho Analyticsなどを活用した“CRMを活かす会議の作り方”について、
実践的な視点から解説します。
形だけのCRMから脱却し、売上と行動をつなげるためのヒントとしてご活用ください。
なぜCRMが活用されないのか?
導入後に起こる“沈黙”の原因
CRMを導入した企業の多くが直面するのが、
「現場で使われない」
「入力が定着しない」
「使っても成果につながらない」
といった“活用の壁”です。
実際、ツール導入後数ヶ月で利用率が急低下するケースは少なくありません。
では、なぜこのような状況が起こるのでしょうか。
CRMが“使われない”三大要因
- 目的が現場に伝わっていない
CRMの導入目的が「見える化のため」「報告を簡素化するため」など、
管理側の視点に偏っている場合、現場はツールを「監視の道具」と捉えがちです。
その結果、形だけの入力や、実態と乖離したデータが蓄積されてしまいます。 - データが“活用される場”がない
多くの企業では、せっかくCRMに情報を入力しても、それを活用する会議や打ち合わせの設計がされていません。
営業会議でもCRMの画面は使われず、別途Excelを作成して報告するような運用が残っていると、
入力のモチベーションは維持されません。 - KPIと連動していない
CRMに記録される情報が、組織のKPIと連動していないと、
「入力しても評価されない」「行動と結びつかない」という印象を現場が持ちます。
成果に直結しないツールは、どれほど高機能でも使われなくなるのです。
CRMは“活用設計”がなければ機能しない
CRMは入力がゴールではありません。
「情報を入力 → データとして可視化 → 会議で議論 → 行動が変わる」
という一連の流れを構築して初めて、業績向上につながる仕組みになります。
この“活用サイクル”の起点となるのが、CRMデータを活用した会議設計です。
現場の動きを引き出す「仕組み」としてCRMを機能させるためには、
日々の会議・定例MTGにおいて、CRMのデータが当たり前に使われる状況を作る必要があります。
次章では、CRM活用の導線を会議体の中にどのように設計していくかを具体的に解説します。
CRM活用には会議設計がカギ!“使われる場”を作る発想
CRMは、導入すること自体が目的ではなく、業績や営業行動に結びつく「活用の場」をつくることがゴールです。
多くの企業がCRM導入後に「結局入力されない」「使われない」と悩む理由は、
CRMを“使う機会”が日常業務に設計されていないことにあります。
その解決策として有効なのが、CRMを中核に据えた会議設計です。
CRMに蓄積された情報を定期的な会議で活用することで、入力する意味が明確になり、
部門間の連携や行動改善にもつながっていきます。
CRMデータを使う“場”としての会議体
たとえば、ある会社ではCRMを活用した会議として次のように設計しました。
会議名 | 頻度 | 活用されるCRMデータの一例 |
---|---|---|
期初会議 | 年1回 | 売上目標/納品後一定時期経過案件一覧/再提案候補一覧 |
月末会議 | 月1回 | 発生・停滞・受注・失注案件/定期訪問提案数/タスク遂行率 |
週次会議 | 週1回 | 差額対策タスクの進捗/案件ごとのアクション確認 |
日時会議 | 週2回 | 提案前・ヒアリング済み案件のレビュー/見積もり調整 |
メンテ会議 | 週1回 | 訪問のタスク管理/未対応案件の確認 |
これらの会議では、Zoho CRMに入力された情報をリアルタイムで表示しながら、
「どの案件を優先するか」「誰が、いつまでに、何をやるか」を明確化しています。
つまり、CRMが“議論の土台”になっており、報告と意思決定がデータに基づいて行われているのです。
会議でCRMを使うことで“入力の意味”が生まれる
CRM活用を定着させるには、「CRMに入力すると、その情報が会議で使われる」状態を作ることが極めて重要です。
たとえば、以下のようなサイクルが回り始めれば、自然とCRMが使われる仕組みに変わっていきます。
CRM活用サイクルの一例
CRMにタスクや商談メモを入力する
↓
会議でその内容が確認され、進捗が共有される
↓
実行した行動や結果にフィードバックが返ってくる
↓
行動が変わり、成果につながる
このような「CRMが可視化→対話→行動へとつながる」運用設計を行うことこそ、CRMコンサルティングの中核です。
船井総研が重視する“会議体ごとの活用目的”
船井総研では、CRM活用定着のために会議設計をKPI設計とセットで支援しています。
重要なのは、すべての会議でCRMを使うことではなく、
「どの会議で、何の情報を使い、何を決定するのか」を明確にすることです。
会議設計とKPI設計の一例
- 期初会議では、売上目標とターゲット顧客の設定
- 月末会議では、重点案件の振り返りと翌月へのアクション決定
- 週次会議では、進捗チェックとフォロータスクの設定
- 日次会議では、提案の質向上と見積調整の即時対応
このように会議設計とCRM活用を一体で考えることで、
CRMは“報告のためのツール”から“行動を生む仕組み”へと変わります。
業績を動かすKPI設計:CRM会議の出発点はここから
CRMを“入力される仕組み”にするためには、
「その入力がどう業績とつながるか」を現場が理解している必要があります。
そのために欠かせないのが、経営目標から逆算したKPI設計です。
CRMに蓄積されるデータは、売上という最終成果(KGI)に対して、
どのような行動が足りていて、何が成果に結びついているのかを可視化する重要な手段です。
よって、CRMの中に入力すべき項目や、会議で確認すべき数値は、
単なる操作項目ではなく「業績設計そのもの」でなければなりません。
逆算設計でCRMとKPIを連動させる
船井総研のCRMコンサルティングでは、まず以下の順番でKPIを構築します。
- KGI(売上・受注目標)を定める
期初会議で全営業に対し、年間・月間目標を設定しCRMに登録(例:Zoho予実タブ) - KPI(行動・中間指標)を設定する
発生案件数、提案数、訪問件数、受注確率などを定義 - ダッシュボードとレポートでKPIを可視化する
Zoho CRMまたはZoho Analyticsを用いて、週次・月次で確認できる形式で表示 - 会議体に落とし込む
会議ごとにどのKPIを確認し、どのアクションを取るかを事前に設計する
たとえば、ある会社様では、「発生案件数」や「訪問タスクの遂行率」をCRMに登録し、
それをもとに月末・週次会議で改善施策を検討しています。
KPIを会議で“生きた数値”に変える
重要なのは、KPIが“管理用の数字”ではなく、「次の行動を決める判断軸」として使われることです。
以下のような会議運営により、KPIは現場の行動と直結していきます。
- 売上目標との差分を見て、今月詰めるべき商談を明確化(差額対策)
- 停滞している案件をレポートで抽出し、タスク化して対応策を議論
- 提案率・提案数が低い担当に対し、ロールプレイングや同行支援を設定
- 競合に過去とられた案件リストを活用し、新規アプローチ先を選定
このように、CRMを単なる記録ではなく、
「KPIに基づく会議運営と行動変革のエンジン」に昇華させることで、システムと成果がつながります。
船井総研が重視する“現場で使えるKPI”
KPI設計のポイントは、「誰が見ても分かる」「すぐに行動に移せる」ことです。
CRM上での数値と、現場の営業やメンテナンスの頭の中にある感覚がズレないよう、
シンプルで反復的な指標が求められます。
船井総研では、例えば以下のような“現場で機能するKPI”を重視しています。
現場で機能するKPIの一例
- 発生案件数・提案率・受注率
- 顧客ランク別訪問回数
- タスク遂行率(訪問・電話などの定期活動)
- 他社製品情報の入力件数・更新率
- ターゲットに対するアプローチ進捗率
CRMの入力項目・ダッシュボード・会議体での使われ方が、これらのKPIにひもづいて初めて、
「CRMが業績とつながる仕組み」になるのです。
Zoho CRM × Zoho Analyticsで可視化する
「会議用ダッシュボード」
CRMを“使われる仕組み”にするには、入力された情報が
「誰にとっても見やすく、判断しやすい形で可視化」されている必要があります。
ここで重要になるのが、Zoho CRMとZoho Analyticsの組み合わせによる会議用ダッシュボードの設計です。
営業会議やメンテナンス会議では、Excel資料や口頭報告に頼るのではなく、
リアルタイムに更新されるダッシュボードを用いて進行することで、
時間短縮と意思決定の質の向上が同時に実現します。
会議で使われるダッシュボードの特徴
船井総研では、CRM活用コンサルティングの一環として、
「会議でそのまま使える」ダッシュボードの構築支援を行っています。
特に中堅・中小企業においては、以下のような特性を備えたダッシュボードが有効です。
ダッシュボードの一例
- 誰が見てもすぐわかるグラフと一覧形式
- アクションすべき項目(未対応、滞留など)が色分けされている
- KPIごとに営業担当別の進捗が明確
- ダッシュボードをクリックすれば、詳細画面に遷移可能
たとえば、ある会社様の運用では、以下のような画面が設計されています。
会議 | 私用される主なレポート・ビュー |
---|---|
期初会議 | 年間売上目標一覧、老朽製品リスト(他社製品/自社製品) |
月末会議 | 停滞案件リスト、受注・失注一覧、タスク達成率、定期訪問提案率 |
週次会議 | 差額対策タスク進捗、重要案件メモ一覧、アプローチ履歴 |
日次会議 | 提案予定案件のステータス一覧、見積修正の進捗確認 |
Zoho CRMでは基本的なレポートやリスト表示でこれらを実現できますが、Zoho Analyticsと連携することで、
部門横断の集計や時系列比較、KPIトレンドの可視化など、より高度な分析も可能になります。
CRMデータを“意思決定につながる形”で可視化する
営業会議では「案件の進捗がどうなっているか」「どこに注力すべきか」をすぐに判断できる必要があります。
そのためには、以下のような設計が必要です。
発生案件 : ステージ別進捗/停滞日数/対応履歴
差額対策 : 目標と実績のギャップ/優先アクションの明示
活動指標 : 担当者別タスク遂行率、訪問・電話の実施状況
定期点検 : 担当別提案率/商談化率のヒートマップ表示
これらの情報を会議ごとに整備しておくことで、
CRMが「確認するためのツール」から「行動を促す仕組み」へと進化します。
また、船井総研では、会議ごとのダッシュボードテンプレートを業種別に持っており、
導入企業の目的に応じてカスタマイズ可能です。
「誰が・どの会議で・どの画面を見て・何を決めるか」が設計されていれば、CRM活用は自然に定着していきます。
CRMを活かす会議運営の手法
頻度・役割・議題設計の型
CRMを現場に定着させ、継続的に活用される「仕組み」にするためには、
CRMに入力された情報を使って具体的な意思決定を行う“会議運営の型”が欠かせません。
CRMは入力だけでなく、確認・対話・改善行動までを一貫して回す“仕掛け”があって初めて機能します。
船井総研では、CRM活用を促すために「会議の場こそCRMの出口」と位置づけ、
会議ごとの目的・頻度・参加者・議題項目を明確化することで、
CRMが“業績につながる習慣”となるよう設計しています。
議題設計は「見る→決める→動く」まで設計する
CRMを使った会議では、“見るだけ”で終わらない設計が重要です。
CRM画面にある数値をただ確認するのではなく、
「では、次に何をするか」を明確に決める流れを組み込むことで、データが行動につながります。
以下は、月末会議での基本的な議題の型です。
【先行管理】目標と実績の差分を確認し、詰める案件を特定
【案件確認】停滞案件・失注案件に対し、対応タスクを設定
【成功事例共有】受注案件の横展開候補を抽出し、他メンバーに共有
【訪問・電話タスク】遂行率を確認し、低い担当者に改善策を提示
【提案率・受注率】担当別に分析し、トップ層のアプローチを標準化
議論のたびに「誰が・いつまでに・何をするか」をタスクに落とし込み、
CRM上で追える状態にすることで、PDCAが自然と組み込まれた“動く会議”へと変わります。
CRM会議は“教育と改善”の場でもある
CRMを活用した会議体は、ただの進捗確認の場ではありません。
特に営業未経験者や若手メンバーにとっては、
「どんな案件を優先すべきか」「どう提案を工夫すれば受注できるか」
といったナレッジ共有と営業教育の場としても機能します。
たとえば、提案率が高い営業担当のヒアリング手法や提案が成功している担当のトーク例を共有することで、
属人的な成功体験をチームに展開し、再現性のある営業組織づくりが可能になります。
船井総研のCRMコンサルティング事例
~CRM会議で営業行動が変わった瞬間~
CRMが「使われるシステム」として機能し始めた瞬間――
それは、営業現場の行動が変わったときです。
本章では、実際に船井総研が支援した企業において、
Zoho CRMとCRMコンサルティングによる“会議設計”が営業活動をどう変えたかを紹介します。
導入当初の課題:「入力されない」「報告だけの会議」
事例企業様では、CRM(Zoho CRM)を導入していたものの、当初は情報の入力が定着せず、
Excelや紙資料を中心とした営業報告が続いていました。
営業会議でも「売れた・売れない」の感覚的なやり取りが中心で、具体的な行動改善にはつながっていませんでした。
CRM導入当初の現場の声
- 停滞している案件が放置される
- タスクの完了率にばらつきがある
- 同じような失注理由が繰り返される
このように、CRMは「入れるだけ」の存在になっていたのです。
CRMを中心にした“会議再設計”で行動が変化
そこで船井総研では、CRM定着のための会議設計支援を開始しました。
具体的には下記のとおりです。
会議設計支援後の現場の声
- 会議の目的と使う画面(レポート)を明確化
- 週次・月次で使い分ける「CRM会議テンプレート」を設計
- 各営業のタスクや商談進捗をCRMから直接確認・指導
- タスク実行率・提案率・訪問件数をKPI化し、毎回数値で議論
この設計により、
「CRMを見る→行動を決める→実行する→またCRMで振り返る」
というPDCAの流れが会議の中に生まれました。
営業担当者からは下記のようなコメントをいただきました。

今まで放置していた案件の重要性に気付いた!

タスクを入れておかないと、会議で議論にならないと感じるようになった!

受注に近づける提案内容を、会議で一緒に考えてもらえるようになった!
つまり、CRMが“管理される道具”ではなく、“営業を支援してくれる仕組み”として再定義されたのです。
結果:営業の質が底上げされ、提案率・受注率が向上
CRM活用会議が根付き始めてから、社内では次のような成果が確認されました。
CRM活用会議定着後の成果例
- 提案前ステージでの商談放置が激減
- 30日以上停滞していた案件数が前年比50%減少
- 定期点検提案率が20%→38%に改善
- 若手営業の受注率が向上し、ベテランとの格差が縮小
さらに、会議の中で共有された受注事例が別の営業担当の提案に活かされるなど、
社内のナレッジがCRMを通じて循環し始めたのです。
このように、CRMを“使われる仕組み”として会議に落とし込むことで、営業行動は確実に変化します。
CRMは単なるITツールではなく、マネジメントの基盤そのものになり得ることを、この事例は示しています。
おわりに
CRMを“業績につながる仕組み”へ変えるには?
CRMは「導入すること」が目的ではありません。
ましてや「入力されること」自体も目的ではありません。
CRMが定着し、業績向上に貢献する“仕組み”として日常業務に溶け込むことが、
私たちCRMコンサルタントの最終的なゴールです。
本記事でお伝えしたように、CRMは単なるツールではなく、
「営業会議」「KPI設計」「マネジメント」「教育」の土台として活用することで初めて真価を発揮します。
とくに中堅・中小企業では、属人的な営業やアナログな管理手法に頼りがちな現場が多く、
CRMの活用が形骸化してしまうケースが少なくありません。
そのような企業こそ、CRMの導入前後にプロのコンサルタントとともに、
- どの業績指標を追うべきか(KPIの設計)
- どの会議で、誰と、どのように活用するか(会議設計)
- どのように継続的な運用改善につなげるか(仕組み化)
といった「プロセス設計」を丁寧に行うことで、
CRMは「使われるツール」から「動く組織の基盤」へと変わっていきます。
船井総研では、Zoho CRMやZoho Analyticsなどのツール導入支援だけでなく、
それを業績に結びつける会議運営設計・人材教育・活用定着までを一気通貫でサポートしています。
「CRMを導入したのに使われていない」
「データはあるのに、意思決定に活きていない」
といった悩みをお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。
CRMを“業績につながる仕組み”へ変えるお手伝いができるのが、私たちCRMコンサルタントの役割です。

船井総研はZohoの認定パートナーです!
船井総研では、コンサルティング会社として中小・中堅企業様をご支援する中で、
Zohoを利用した業務改善も多数行っています。
「社内の業務をDXしたいけど何から手を付けたら良いかかわからない」
「Zohoと他サービスの違いを詳しく教えてほしい」
「Zoho導入に際しての費用やスケジュール感を聞きたい」
「他社がどのようにZohoを活用しているのか具体的な事例を知りたい」
「レガシーシステムからZohoに移行したい」
など、ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください!